会社移転前最後の一週間で巡る小伝馬町ランチシリーズ最終回。他にも行ってみたい店はまだまだありましたがこれまで最多登場の「かめや」に伺いました。いつもは春菊天ですが今日は最終日、奮発してミックス天に月見で。
たまたま昼食に行こうと立ち寄った店が早じまいしており昼食難民になったことで、思わず飛び込んだのが初めてこちらを訪れたきっかけでした。見るからに古くから続けてこられた感が満載の佇まいからか、なかなかはじめて足を踏み入れるきっかけが掴みづらかったのですが、それでもなにか気になるものがあったのでしょう。外看板にかけられた品書きを眺めつつなにを頼むかいつも思案してたのを思い出します。
いわゆる神田にある名だたる蕎麦の名店ではありませんが、立ち食いそば屋にはまた独特の風情があります。ふらっと立ち寄り注文したら黙々と食べ、器を返して一言挨拶して店を出ると。このミニマムな必要最小限の動作を全ての客が入れ代わり立ち代わりしつつ淡々と進めていく。そして自分もその流れに同化していくという不思議な空間です。
そのなかでもやはりこちら「かめや」さんは出汁が旨く何度も通いましたね。カウンター上には濃い目が好みの方向けに「蕎麦タレ」が置かれているところをみても、関東・神田の蕎麦界ではやはり濃い出汁ではないのでしょうが、キリッとした風味があってとても美味しいです。そういえばここではもり蕎麦は食べたことなかったな。立ち食いそばってなんとなく「もり」ではなく「かけ」っていうイメージありません?
与太話満載でなにを言ってるのかよくわからない「立喰師列伝」なんて映画もありましたが、なんとなく胡散臭いあの昭和の裏通りの空気をいまに残す一軒。いつかケツネコロッケのお銀や月見の銀二に店先で出会うんじゃないかとそわそわします。「前金でお願いします」ってしっかり書いてあるところが正にそんな空気を醸し出しているのでしょう。
近くに立ち寄ったら、ではなくわざわざまた小伝馬町まで足を運ぶことになるでしょう。
広告制作ディレクター & サウンドデザイナー。広告制作の傍ら、Ko ASHIDA・rudimentary echo・sizk名義などで楽曲制作・インタラクティブメディア制作を行っています。とにかくなんでも「つくる」のが大好き。音楽・料理・DIYなど思いついたものをどんどん作ってます。